
前回に引き続き、弁護士のお仕事ご紹介!
前回は主に法科大学院、司法試験制度改革について書かせていただきました。
法科大学院(ロースクール) 卒業後のキャリア①~法科大学院とは~
今回は法科大学院卒業後、見事司法試験に合格した後の進路について書かせていただきます。
まず、司法試験に合格したらすぐに弁護士になれるわけではありません。
旧司法試験合格者は司法研修所において最長2年の修習を受けたのに対し、
(その後1年半、1年4か月・・・と期間が短くなりました)
新司法試験合格者の場合、「法科大学院において実務教育がなされている」と見なされ、
修習期間は1年とされています。
そして修習の最後に国家試験である「司法修習生考試」が行われ、
それに合格した者は修習終了となり、ついに弁護士登録資格を得ることができます。
(ちなみにこの司法修習生考試も連続三回までしか受けられない、という受験制限があります。
三回試験に落ちると、難関の司法試験に受かっても、弁護士になることはできません・・・結構残酷ですね・・・)
花形職業とされてきた弁護士の世界に、異変が起きているとのことです。
弁護士白書(2010年版)によると、弁護士の09年の所得(弁護士業務以外も含む)の内訳を見ると、
200万円未満が3.2%、500万円未満だと16.4%を占めています。
高所得のイメージが強い弁護士でも、年収200万円未満の人が出始めています。
このような弁護士を表現し、最近は「ワーキングプア弁護士」という言葉も使われるようになりました。
ワーキングプア弁護士とともに、弁護士業界の厳しい実態を示すのが新人の就職難です。
日本弁護士連合会のまとめによると、12年に司法修習を終えた2080人のうち、
6月3日時点で78人がまだ弁護士登録をしていないとのこと。
そのうち21人は企業や官庁への就職者、6人は登録見込みですが、10人が就職活動中、41人は理由不明などとのことです。
司法研修所での司法修習を終えても、日弁連に登録しないと弁護士にはなれません。
その際、登録料や弁護士会への入会金のほか、毎月の会費が必要です。
初年度には数十万円程度かかり、2年目以降も年数十万円の会費を払い続けなければなりません。
当然、「会費の支払いに見合うだけの収入を継続的に得る見通しが立たなければ、登録しても意味がない」ことになります。
まだ登録していない人には、こうした事情もあるのかもしれないとのことです。
修了試験に合格すれば、晴れて弁護士として活動できるわけですが、
いきなり自力で事務所を開設するのは大変です。
そのため、既存の法律事務所に就職して、弁護士として働きながら給料を得ることが多いようです。
そのような弁護士は、「勤務弁護士」「イソ弁(居候弁護士の略)」などと呼ばれています。
しかし、以前だったらいきなり独立はリスクが高いと言われていましたが、
司法制度改革によって弁護士の数が急増している現在では就職が難しく、
組織には所属せず、「即独」と呼ばれる個人事業主として、独立開業の道を選ぶ人もいます。
法律事務所を経営する「ボス弁」に雇われて給料をもらうイソ弁は昔からいますが、
最近は法律事務所の一角を貸してもらうだけの「ノキ(軒)弁」も珍しくはなくなったとのことです。
軒弁は事務所を間借りしているだけという個人事業主であり、
仕事はすべて自分で取ってこなければなりません。
ここ数年はさらにその先をいく、電話一本で仕事を受注する「ケータイ弁」という概念も生まれています。
ちなみにイソ弁の初任給(弁護士になって一年目は既存の法律事務所に就職するのが一般的です。
そのため、弁護士の平均年収はイソ弁の年収と思ってよいとのこと)は、
500万円~700万円ぐらいが相場です。
※手取り金額ではありません。
一方で大手弁護士事務所では、初任給が1000万円を超えるところもあります。
弁護士の就職については、時期と方法が分かれます。
時期としては、採用時期が修習開始前と修習開始後のものがあり、
方法としては、ふつうの企業の就活のようにウェブなどを通じて申込むものと、
おそらく伝統的な形である口コミ的な採用とがあります。
修習開始前に採用をするのは、たいてい弁護士数30人以上の大規模事務所であり、ウェブ方式が通常です。
また、修習開始後に採用をするのは、それ以外の、いわゆる街弁(街の弁護士)と言われることが多いような事務所です。
また、大規模事務所は法科大学院や司法試験の成績を重視して採用をし、
それ以外の事務所は成績に対するウェイトは軽めとされます。
四大事務所と呼ばれる大手弁護士事務所
(西村あさひ法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、森・濱田松本法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
が内定を出すのは6月頃です。
つまり、司法試験結果が出る前に就職活動が終わっているのです。
「初年度で年収1000万円」といわれる四大事務所の人気は当然高いですが、
入ることができるのは、全体からみればごく一部です。
それ以外の人は、中堅規模の法律事務所、外資系事務所、さらには街弁と呼ばれる小規模な事務所、企業などの選択肢を探ることになります。
司法書士の就職活動もそうでしたが、
資格を取れば、自然と就職先が決まる時代ではない、ということでしょうか。
また、もう一つの問題として弁護士の奨学金問題があります。
晴れて弁護士になることができても、就職先がないために
法科大学院に進学するために借りた奨学金を返済できない弁護士が増えているのです。
【コラム】稼げる弁護士は何が違うのか?
に大阪市長の橋下徹氏が弁護士になった経緯として興味深い内容が書かれてありました。
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橋下氏が弁護士を志したのは、学生時代に始めた商売でお金をだまし取られたことがきっかけで、
法的な知識や理論武装といった実務面での必要性を痛感したからのようだ。
弁護士になると「イソ弁」生活は1年ほどで卒業。
大都会の大阪で通常は10年程度が独立のタイミングといい、当時は異例の速さだった。
独立後は、普通の弁護士事務所があまり引き受けない損保業務の示談交渉を積極的に手掛けた。
現在、記者会見で報道陣を相手に丁々発止のやり取りができるのも、
この時にビジネスコミュニケーション能力やネゴシエーション能力に磨きをかけたからだといえる。
弁護士になった当初から名刺を積極的に配るなどの人脈作りに励むといった「経営スタンス」は、
大手企業の隙間を埋めるベンチャー企業の立ち位置のようだ。
こうした経歴を俯瞰すると、社会的地位や年収の高さへの漠然とした憧れではなく、
ビジネスパーソンとして身を立てていくという「目的」のために、
弁護士資格を「手段」としてキャリア戦略的に位置付けていたことがうかがえる。
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また、約6,000人の弁護士が登録する弁護士紹介サイト「弁護士ドットコム」を運営するオーセンスグループの元榮太一郎弁護士も、
「中小事務所でもスポットの訴訟案件を積み重ねたり、インターネットで法律の質問サイトに答えて顧客を探すなど、営業努力をすれば食っていける。弁護士を甘やかす必要はない」と主張します。
実際、弁護士の中では依然、年収数億円を稼ぐ人も多くいます。
こうした「食える弁護士」にとっては、「努力不足」という見方も当然出るでしょう。
食える弁護士と、食えない弁護士の二極化は、進む一方です。
司法制度の改革により法曹人口が増え、
弁護士の資格をとれば一生安泰、の時代は終わりました。
橋本氏の弁護士資格を「手段」と捉え、切り開いていく姿は
資格を取りそれを仕事とする上で大事なことだと思います。
資格試験でなくても、同様のことが言えます。
会社に入ったから、安泰。
正社員だから、安泰。という時代ではないはずです。
村上政博・成蹊大学法科大学院教授は、こう記事で述べています。
「もう弁護士は特別な資格ではなくなった。自分のキャリアアップにつなげるための一資格にすぎないと、受け止めるべきだ」
次回は
法科大学院(ロースクール) 卒業後のキャリア③~司法試験を断念。その後の就職活動~
についてです!
本日もお疲れさまでした!!
引用元:
知らなきゃ損する!弁護士の選び方・使い方blog
伊藤塾 司法試験合格後の仕事
特集:食える弁護士、食えない弁護士 第1部 弁護士業界編 2013年8月6日特大号